Roy

    Cannes Lions2015レポート

    今年BIRDMANからは、CTOのコバヤシタケル、Creative Directorの長井の3名が参加してまいりました。自分のTwitter(@roy_birdman)でもツイートしていたのですが、今年のカンヌは誰かが会場のレッドカーペットの上でSEXをしたり、グランプリを獲った2作品にパクリ騒動が出て審査員の質が問われるなど、エキサイティングな年でした。

    2年おきにカンヌに来ていて今年は3回目なのですが、毎年のように日本が受賞する作品が目に見えて減っていっています。そもそも日本は広告において外国のメソッドは効かない特殊な国とされています。つまり外資系の広告代理店がグローバルで展開しているキャンペーンを日本でやっても全く上手くいかないケースがほとんどなのです。現在は日本国内でウケている広告が、海外のアワードでは全くウケない状況になってます。まあ、逆の話しなので当たり前なのかもしれないですが・・・。このままだと日本の広告はガラパゴス化していくかもしれません。まあ、そもそもアワードのために広告を作っているわけではないので、別にいいっちゃいいのですが。

    ただ、せっかく良い広告を作ったのに、こういうところで評価されないのはもったいない。今回来てみて色々気づかされることがありました。せっかく良いキャンペーンなのに見向きもされない。それは日本のアワード用ビデオの作り方があまりにもテンプレート化されてしまっていて、そのテンプレートが4、5年前の日本が受賞ラッシュだった頃のビデオの作り方で止まっているように感じました。日本のビデオを見るとほとんどのビデオが「In Japan…」から始まる、みたいな・・・。審査員は日本人じゃないので、In Japan…に共感できないんです。そんなのではなく、どの国の審査員も分かるインサイトから始まらないと駄目です。

    今回非常に感じたのは、海外の受賞作品はまずは問題定義から始まることがとても多いです。問題定義というのは社会問題、もしくは世界でも共感できるようなインサイトのことです。それらの課題を解決する、というのが今のアワードビデオの主流です。日本の作品のように単にクライアントの課題を解決する、というだけでは全く箸にも棒にも引っかからなくなっています。いくら日本や海外でバズってビュー数がものすごいことになっていてもです。いくらバズった広告でも、なんでこんなことしたんだ?と問われます。つまりSo What?状態です。課題解決じゃ無い面白いアイディアが評価されないと、なんか、、、とても寂しい気もしますが、現状はそれが現実です。しかし、毎度毎度クライアントの案件をやる度に社会問題を探すとか、世界共通インサイトを探すということでは無く、何度も言っているようにアワード応募ビデオの作り方がそのようになっていれば良いと思います。

    例えば今回日本に初GoldをもたらしたTBWA博報堂のTrue Wetsuits. アワードでのビデオの作りは日本のサラリーマンは働き過ぎだ、と始まっています(※上記はアワードビデオではありません)。この「日本人は働き過ぎ」というのは今では世界共通のインサイトです。忙しすぎてサーフィンから離れてしまった、というのを解決するのが「True Wetsuits」 という解りやすい構成になっています。

    毎年100人以上が行方不明になるとか、戦争、人種差別、銃社会のように強烈な社会問題がある海外に比べて日本は平和だったりするので、商品のプロモーションをする場合はいかに世界共通のインサイトを探すかが近道です(もちろん日本にも解決しなければならない社会問題は沢山ありますが、あくまで商品と結びつける仕事の場合の話しです)。インサイトと商品を結びつける:今更そのような「方程式」に気が付いたので、これからしばらくはインサイト・ハンターになるべく、常にインサイトを探そうと心に誓いました。これ以上具体的には書きませんが何かのヒントになれば。

    さて、色々なところで受賞作品は紹介されると思うので、自分が特に良かったと思う作品を少しだけ紹介したいと思います。


    :::::HANDS OFF:::::

    今回自分が一番良かったと思ったし、社会問題やSocial Goodばかりが受賞する中で特に勇気づけられたのが「Hands Off」というエロ動画サイトのプロモーション。エロ動画なんてタダで手に入る昨今、どうやったら$9.99/月を払ってもらえるか、が課題。いかにこのサイトの高いクオリティーの動画を試してもらえるか、がポイントです。ソリューションとして、まずこのサイトを試してもらうために全ての機能を無料で開放。たった1つの条件:サイトの動画を見るためには両手をキーボードから離したらいけないという条件付きで・・・。大人ならだいたい解ると思いますのであまり深くは説明しません。今回このプロモーションがPROMO & ACTIVATION部門でGOLDを受賞しました。特に面白かったのが、女性の審査員達がこのサイトを強く推したとのこと。しかもこの部門の審査員長が女性で、グランプリを上げても良いくらいにこの作品を推していたと。聞いた時はマジか!と思いましたが、良いモノは良いと女性ならではの客観的な冷静な視点で判断したのかもしれませんね。マジで受賞おめでとうございます!


    :::::INACTIVITY TRACKER:::::

    2つ目はパジャマ屋さんのプロモーション。APPLE WATCHやNike Fuel Bandなど、運動をトラッキングする中、このINACTIVITY TRACKERバンドはパジャマを着て家で何もせずにゴロゴロすればするほどリワードがもらえるという画期的?な時代を逆行したデバイス。目の付け所が素晴らしい。


    :::::MAKE UP GENIUS:::::

    3つ目はMAKE UP GENIUS by Loreal Paris. これは自分がその商品をメイクしたようにリアルタイムに見えるアプリ。こんな企画は今まで死ぬほどあったと思うが、とにかくこれはダウンロードして試してほしい。
    とにかくクオリティーがハンパないのだ。彼らは市販されている顔認識APIなどは使わずに独自で開発したようだ。そのため認識が本当にリアルなのだ。ここまでリアル、しかもシンプルだし簡単であれば商品につなげられるし店舗誘引にもつなげられるのは納得が行く。このクオリティーはしつこいようだが本当に素晴らしい。そして、このシンプルなアプリはいくつかのGOLDを獲っている。これもクオリティーが突き抜けていれば、ちゃんと評価されるということを示した作品だ。こんなにスゴイのに日本で全く知られてないのは本当にもったいない。PRがダメダメすぎる。


    :::::GEICO UNSKIPPABLE:::::

    これはかなり多くを受賞してフィルムでもグランプリを獲っているので、他でも紹介されるだろうからあまり深くは書かないが、本当に素晴らしい。私がWeb Desiningで執筆注のコラム「One’s View」でもYoutube広告のことを取り上げているので是非そちらも読んでいただきたい。今までにもYoutubeの広告SKIP の仕組みを利用したものは古くからあったが、このUNSKIPPABLEはとてもアイディアが面白く、クラフトも素晴らしく本当にSKIP出来ない広告に仕上がっている。


    ::::THE FUN QUE::::

    最後が遊園地が行った施策。「人気アトラクションは待つ」というインサイトをとてもうまく使ったキャンペーンです。というかこれなんで今までやってないの?特にディ○ニーランドとかって思います。これは待っている最中に楽しめるアプリを開発しました。このアプリをやるにはそのアトラクションに並んでいないと出来ないという仕組みになっています。さらにそのアトラクションに乗った後にもアプリが連動しています。インサイトを発見し、ソリューションを提供することでネガティブをポジティブに変える、とても美しい施策だと思います。


    GEICO UNSKIPPABLE以外は自分が気になった中でも、他であんまり他でも取り上げられないかなー、という視点でピックアップしてみました。
    最後は恒例の作品紹介になってしまいましたが、記事の前半の方は2年前には感じなかった点で、今回本当に行ってよかったな~と思ったことを書いたので何かのヒントになればなー、と思います。

    ちなみに今回弊社ではOK GoがPromo & Activation部門でBronzeとShortList、Android合唱団がDesignでShortListをいただくことが出来ました!ちなみにちなみにOK GoはCyberでもShortListに入っていますが、こちらはVideoの受賞なのでBirdmanはあまり関係ないので入れてないです。
    とりあえずお疲れ様でした!