Flashを中心としたさまざまな言語を活用して、BIRDMANでフロントエンドを担当している阿部啓太さん。
おだやかで人懐っこい印象を受ける啓太さんですが、実は見た目以上の貪欲さと情熱を内に秘めていました。
とにかくつくることが好きだという彼のルーツと、仕事への想いについて伺いました。

2014.6.24

インタビュー:岡本真帆 撮影:竹内冠太

夢中になると周りが見えなくなった少年時代

啓太さんは現在Flashを中心にフロントエンドの実装を担当されていますが、昔から何かをつくることが好きだったんですか?

そうですね。僕は4人兄弟で、兄が1人、弟と妹が1人ずついるのですが、子どもの頃はよく兄と2人で一緒にオリジナルのゲームをつくって弟たちと遊んでいました。そのときはプログラミングとかじゃなくて、紙と鉛筆でつくったような簡単なものなんですけど。ボードゲームをつくったり、その当時遊戯王カードが流行っていたので、遊戯王カードを自作してみたり(笑)。自分たちで工夫して、楽しみを見つけていました。

中学生になっても、やっぱりつくることが好きで。『RPGツクール』で自分のゲームをつくってずっと遊んでいました。部活よりもそっちの方が好きでした。

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その後はどんな生活を送られていましたか?

中学卒業後は、地元新潟にある高専に進学しました。
学校ではぜんぜん勉強しなくて、友達ともそんなに一生懸命遊ばなくて、超ひきこもりでしたね…。

えっ。ひきこもりだったんですか!

ひきこもりでした(笑)。学校にはちゃんと行ってたんですが、オンラインゲームにドはまりしてて…。朝起きたらパソコンをつけて、8時に開催されるバトルダンジョンという大会に出場して。終わったら学校に行って、授業を受けて。で、学校が終わったらすぐに帰ってきて、それから夜までずーっと遊ぶ、という生活でした。休日もずっと。ひきこもりというか…半端ないレベルの廃人でしたね。

廃人(笑)。はまるととことんやり尽くすタイプなんですね。

そうですね。いやー、でもさすがにやばかったなーあれは(笑)。

Flashとの出会いと、ものづくりへの憧れ

そんな中、高専の4年生になった年に、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で中村勇吾さんの回の放送をたまたま観て…衝撃を受けました。「こんな仕事があるのか!」と。それまでは、仕事ってもっとカタくてしんどそうなイメージだったんですけど、その印象が変わりましたね。すごく楽しそうだなって思ったんです。
番組を観たあと、中村勇吾さんについて詳しく調べてみたら、「どうやら“Flash”っていうものを使ってるみたいだ」と分かって。それがFlashとの出会いでした。

ある意味運命的な瞬間ですね。

それから地元の居酒屋でアルバイトを始めたんですけど、美大生のバイト仲間からデザインや写真の話を聞くうちに、すごく羨ましくなってきて。徹夜で制作課題つくってるんだ、とか、卒展が大変だー!とか…。そんなにおもしろいところがあるのに、俺は何をやってるんだろう…って。もともと何かをつくるのは好きだったんですけど、制作に夢中になっている人たちを間近で見て、自分もものづくりに憧れるようになったんです。「俺も美大行きてー!」って(笑)。

それでWEB制作の方に進むことを決めたんですか?

就職するならものづくりに関われる場所がいいなと思うようになりました。高専で学んでたことと美術系って全然ジャンルが違うんですけど、唯一重なる部分がWEBで。WEBなら高専で学んできたプログラミングもあるし、勇吾さんの番組で知った“Flash”もある。やるんだったらそっちで就職しよう!と。
そこで、高専を卒業後に地元のデザイン専門学校でもう1年間勉強して、それから就職しようと決意しました。

てっぺんを目指して。Flasher二人組「RET」の挑戦

「RET」活動サイトのプロフィールページ。

「RET」活動サイトのプロフィールページ。

専門学校でFlashを本格的に学び始めたんですね。

専門学校時代は、がむしゃらでした。そこで、「一緒にFlashを極めたい!」という、アキラという友人に出会います。これがまた熱いヤツで(笑)。「俺と二人でてっぺんとろうぜ!」って言って、意気投合して「RET」というユニットをつくったんです。
RETの活動サイトを立ち上げて、そこに自分たちがつくった作品を載せたり、日々研究したことをブログにアップしたりしていました。

勉強熱心だったんですね。ブログの投稿をみていると、すごく楽しそうです。

そうですね。このサイトは、専門学校を卒業するまでの1年間続けました。互いに切磋琢磨してましたね。本当にこのとき、つくることが楽しくて仕方なかったんだと思います。

最先端の仕事がしたい!

専門学校に通いながら就活をして、晴れて地元のデザイン会社に内定をもらいました。その会社には3年間いました。当時は、2010年頃ですかね、Flashでコーポレートサイトをつくることをメインにやっていました。他にもサイネージのコンテンツをFlashでつくったり、アプリゲームの演出部分をつくったり。週末はクラブに通うようなノリのいい社員さんが多くて、コミュニケーションスキルも鍛えられました(笑)。

なるほど。

ただ、やっぱり自分の中で「東京で最先端のことをやりたい」という想いがずっとあって。新潟で就職したのは、1年多く学校に通わせてもらったので、早く就職して親を安心させたいなという想いがあったからなんですけど、いつかは新潟を出よう、という考えはずっと持っていました。なので、就職後も転職活動は継続して行ってましたね。

モックで自分のこだわりをカタチにする

それで、BIRDMANに入社し、現在に至ると。実際入ってみてどうでしたか?

新潟時代との技術力の差を感じました。
入社して一番最初に関わった案件は、PARTYさんと一緒にやっていた『物件数No.1 No.1』というゲームだったんですが、今までやってたことは何も役に立たないんじゃないだろうかって思うくらい、みんな進んだことにチャレンジしていて。入ったばかりの頃は「自分でもやっていけるかな」と不安でした。
でも少しずつ、試行錯誤しながら新しいことに挑戦していく中で、できることも増えていって自信に変わっていきましたね。

宅配寿司 銀のさらの『ハッピーバースシー』では、ほぼ一人で実装を担当されていますね。

はい。結構がんばりました(笑)。
これはユーザーが顔写真を登録するとそれがお寿司に変わって、ミュージックビデオのワンシーンに組み込まれる、というものなんですが、一連のプロモーションビデオに違和感がないようにFlashの合成シーンを繋ぎこむ必要があって。FlashのWEBサイトをつくるというよりも、映像の一部をつくる、という感じです。しかも音楽クリップの映像なので、リズムを一切崩さないようにしなくちゃならない。そこは細心の注意を払って取り組みました。

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合成シーンのクオリティ、すごいですよね。初めて観たとき驚きました。

ミュージックビデオには映像パートとFlashパートがあるのですが、Flashパートでクオリティが下がってしまうのは絶対に避けたかったので、境目をなくしていかに映像のクオリティに近づけるか?というところはかなり力を入れていますね。
また、限りある寿司ネタの種類の中で、いかにカラーバリエーションを出すかというのは苦労した点です。お寿司を並べて実際にユーザーの顔を再現できるか?という確信がなかったので、検証のために前もってモックをたくさんつくりました。お寿司の撮影のときにも現場に立ち会って、「こういう感じで撮ってください!」と話をしたり、撮影現場でも実際にモックを動かしてみて、これでいいですよね?と監督に確認したり。モックをつくるのは楽しいですね。

「モックをつくるのは楽しい」って、とても印象的です。

モックがあると、具体的なイメージをみんなで共有できるじゃないですか。言われたことだけをやるんじゃなくて、「俺はこれがいいと思う」というところまで伝えられる。自分のアイデアを明確な形で示せるので、とても好きですね。どんどんつくりたいです。

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目指すは、「自分ひとりでコンプリート」

iOSの実装などもやられているそうですね。

わずかですが、『HONDA internavi』の販売支援iPadアプリの実装をお手伝いしました。iOSのアプリの実装はやったことがなかったんですが、いずれは自分ひとりでコンプリートしたい!という思いがあって。結構自分はやりたがりなので、社内の先輩に教えてもらいながら取り組みました。担当したのは一部分なんですが、やってみたら案外できて。もっともっと極めていきたいですし、ひとつの技術だけに特化するというよりも、いろんな言語に挑戦したいです。

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いろんな言語をやってみたいというのは、さきほどおっしゃっていた「コンプリートしたい」という気持ちがあるからですか?

ゆくゆくは、サーバサイド含め、案件一つを自分ひとりで担当できるようになりたいです。いろいろできたほうが、おもしろい仕事がめぐってくるチャンスが多いと思うんですよ。理想で言えば、「こんなことやりたいんだけど、できない?」という相談がきて、「僕ができますよ」と言いたい。それで、いろんな人に手伝ってもらったり、自分が手を動かしたりしながら、アイデアをカタチにしていきたいです。自分が中心になって、「体験をつくって人を動かす」ことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。

ヤングカンヌの選考課題にも挑戦されていましたが、どうでしたか?

難しかったです…。実は、広告の企画を考えることが苦手で。今まで多くやってこなかったからだと思うんですけど、広告というものに苦手意識や抵抗も少なからずあります。広告って聞くと、「うっ…」って…(笑)。だけど、広告だからこそ、予算や時間をかけてチャレンジできることもある。
それに、広告も「人を動かす」ことが目的だと思うので、やりたいことは被っているんです。今はできないこと、苦手なこともありますが、自分にできることを少しずつ広げていって、おもしろいことも考えられて、つくれて…という風になりたいと思ってます。まだまだなので、これからがんばります!

 


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阿部 啓太(あべ けいた)

Front-end Engineer
1989年生まれ。新潟県長岡市出身。2009年に高等専門学校を卒業後、デザイン専門学校に進学。新潟のWEB制作プロダクションを経て、2013年7月にBIRDMANへ入社。Flash、Javascript、iOS開発、OpenFrameworks、インスタレーションのシステム開発、サイネージ開発等に精通。これまで『物件数No.1 No.1』『KIRIN DREAM RACE』『ハッピーバースシー』などの実装を担当している。