Roy

    カンヌと私2013

    今回 世界一のクリエイティブの祭典、Cannes Lionsが60周年ということもあり急遽2年ぶりに参加して参りました。個人的な見解ですが、思った事を書き記しておきます。


    前回のカンヌはその年に全く賞が獲れなかったので刺激を受けるために参加しました。その甲斐あって次の年は27の国内外で賞を受賞することができました。で、今年はどちらかというと「獲れるんじゃねーの?」という思いがあって参加してきました。今回カンヌに応募して、いけるかなーと思っていたのが Push for Ultrabook。結果はShortListにも入らず。まあ、ここら辺を書いても負け惜しみにしかならないので書きません。悔しい!でもフタを空けてみたらそもそも日本勢が全然入っていなくて去年一昨年とスゴイ数を受賞していたCyber部門は日本勢が惨敗でした。結果日本からは6つくらい残った感じでしょうか。Filmはたったの2つ・・・。非常に残念な結果に終わりました。

    さて、では去年と今年ではなにが違ったのでしょうか?審査員によって大きく変わるCannes Lions の結果。今回は60周年ということもあり審査員長のほぼ全員がLegendと呼ばれている今の広告業界作ったと言われている大御所の方々が勢揃いしました。新設のMobileとInnovation以外はかなりお年を召している…。で彼らのほとんどが賞に選ぶ基準として言っていたのが、「これは60周年の広告として残すのにふさわしいのか」という視点で選んだということ。ということで60周年にふさわしい広告の数々が選ばれたわけです。それは一言で言い表すなら「人の役に立つ広告」。各ジャンルにおいて「人の役に立つ広告」が選ばれているのが目立ちました。そういう視点で審査が行われた場合、かなり日本にとってはツライですね。日本にとって得意な分野とは言えないでしょう。。。結果が物語っています。。

    では、「人の役に立つ広告」ってどういうものでしょうか?
    カンヌのOutdoor部門で受賞したIBMの「Smart Ideas for Smarter Cities」が分かりやすいですね。


    言いたいことそのまんまポスターになってます。・・・・。これは街がSmartだったら人の暮らしはもっと豊かになるというのを表現しているポスターで、その豊かさをIBMが提供します、ということですね。アイディアもシンプルだし僕は個人的に非常に好きです。で、こんな感じに「人の役に立つ広告」が選ばれているのが各カテゴリーで目立ちました。

    ではなんで、「人の役に立つ広告」なのでしょうか?
    それはやはり60周年ということが大きく影響を与えていて、今回を節目に審査員の方々が今まで人から嫌われていた「広告」という物の概念を変えたい、というのがあったのだと思います。今までは広告というのは「押しつけ」であったのが、SNSなどの普及などとともに口コミが大きく影響を与えるようになってきました。人が人に伝える連鎖を作るためには「広告」ではダメなのです。今回カンヌのセミナーで非常に良かったものの1つがFastCompanyのセミナー「How Ideas Go Viral」でした。今回のカンヌの賞を総なめにした「Dumb ways to die」のCreative Directorの John Mescallと

    これまた賞を総なめにしたDoveの「Real Beaty Sketches」のCreative DirectorのAnselmo Ramosが

    セッションするという超お得なセミナーでした。そこで彼らが口にしたのが”People never share ad. People share entertainment and content.”。人は広告はシェアしない、シェアするのはエンターテインメントとコンテンツだ、と。そして彼らは続けて”People don’t share ideas, they share realization and emotions.” 人は”アイディア”をシェアするのではなく、体験と感情をシェアすると。これらは僕らもよくクライアントにいうフレーズだったりするのですが、実際にバイラルのグランプリをとった彼らが言うのは完全に説得力が違いますね。

    話を戻すしますと、なぜ「人の役に立つ広告」なのかというと、結局「今までの広告では通じない」からなんですね。前に書いたように広告はシェアはおろか共感さえしてくれない。だからコンテンツや体験を提供して、その気持ちを自然に共感/シェアしてもらうようなものを作る、というのが今の主流なんだと思います。このセミナーで得られたことは次回の記事に書こうと思います。長くなるので。ところで、これをバズらせたい、と言っておきながら、あきらかに共感を得られない/シェアされないようなものを作ってしまいがちな人がいます。そのような時は解決方法があります。自分だったらそれをシェアするかどうか考えてみる。それだけです。

    で、今回の60周年のカンヌはそういう感じで「社会貢献」や「人の役に立つ広告」というのが非常に目立っていました。
    まあ、そんなこんなで、60周年だからねー、なんて思っていたんですが、僕らも大きく関わっているCyber部門は明らかに「パッとしないし、ちょっと良く分からないなー」というのが個人的な印象でした。Cyberというカテゴリーは今まではカテゴリーの中でも次の動向がわかるような最先端な部門だったと思っていたのですが、今年に限っては来年の動向が分かるどころか、来年はどうなるんだー!?と思ってしまう感じの結果になったというのが印象です(これはあくまでも個人的な感想です)。

    現在の広告を作った巨匠達が勢揃い

    今回さらに思ったのが、Cyber部門っていらないんじゃないか、と。いや、無くなるかもしれないとすら思いました。今このご時世、アウトドアだろうが、メディアだろうが、ほとんどの施策はデジタルをなんらかの形で使用しているはずですし、さらに一概にCyber といってもイベントだったりインスタレーションだったりDMだったり、イベントだったり、、もうCyberの概念が広くなりすぎてきていると。さらにFilm部門でInteractive Filmというカテゴリがあるのですが、CyberのVideoのカテゴリとどう違うの?とか・・・。 もしCyberを存続させるのであれば、例えばWebサイトだけでやったことを評価するとかそういうCyber部門のある意味を今一度見直しても良いような気がしています。逆に面白かったと話題になっていたのがMobile部門(これはモバイルを使った施策、ということで分かりやすいですよね、そういう意味でCyber はWebサイト部門とかになっちゃった方が良いと思う)。よく一緒に仕事をしているPARTY中村ヒロキさんがこちらの記事で語っています。各作品などに関しては次回の記事でまとめようと思いますが、審査をしたヒロキさん的にはMobile部門は色々な可能性を感じる部門だったようです。Cyber部門と比べて「Mobileデバイスを使った部門」ということで分かりやすかったことも少なからずあるような気がします。

    アパートからの眺め

    今回のカンヌは色々一通り見て回ったのですが、実は2年前の方が刺激をうけたなー、という印象でした。いや、、、自分がエントリーしたからなのかなー?それに2回目だったからかな?刺激を受けたことには変わらないのですが、今年のカンヌの結果を見て、2年前の時のように「こういうのを作ろう!」というのがまだ見えないので、なんか来年はがらっと変わっちゃうんじゃないかなー、とか思っていたり。ただ他の方達が今回のカンヌをどう思ったのかという情報収集などをまだやってない、、、ですし、次回の記事でさらに体験したこと、個別に気になった/刺激を受けた作品などをまとめて、今一度2013年のカンヌを振り返ってみようと思います。

    まずは今回の概要を書いてみました。